第799夜:天正の牡丹模様こけし
天正(天野正右衛門)のこけしも数は多くは無く珍しい部類に入ると思われる。特に戦前の角張った大頭のダイナミックなこけしは筆者も渇望の最右翼である。戦後作では昭和22,3年の所謂稲杭こけしと岡崎家木地の30年代のものが少数知られている。胴模様は菊と楓が多いがロクロ線や牡丹模様もあるようだ。今回ヤフオクに珍しい牡丹模様が出てきたので入手した。口絵写真はその表情である。
天正の牡丹模様のこけしは国恵志堂蔵のものを第917夜で紹介した。それは稲杭こけしであるが、牡丹模様のものはそれ以外に見た事がなかった。その牡丹模様を描いた30年代のこけしが今回のものである。天正の牡丹模様としては2本目である。
こちらがそのこけしである。大きさは7寸、胴底に「昭 三六」の署名がある。昭和36年作ということであろう。天正の30年代作は34年頃に岡崎斉の工場で描彩したものが20本程あるとwikiに書かれているが、それとは別のものであろう。胴には黄色が塗られているようで、それが胴の木地のシミを目立たせなくしている。木地は岡崎家のものと思われる。
30年代の他のこけしと並べてみた。左(6寸、34.8.10)、中(7寸、時期不明)、右(7寸、本作)。左は34年の一連のものと思われるが、岡崎家の木地にしては肩の山が高い。中と右は肩の山が低く典型的な岡崎家の木地と思われる。左2本は胴模様は異なるが、面描はほぼ同じで線が細くチマチマした表情である。一方、右の面描は筆致が太くなって大らかな表情になっている。
牡丹模様の2本を並べてみた。牡丹の花を三段に重ねたものであるが、右は胴が太いためか一段目と二段目の間の左右に蕾を描いている。岡崎家のこけしの胴模様と言えば、代表作の菱菊を始めとする菊模様と楓模様が頭に浮かぶが牡丹模様は記憶にない。そんな中で、天正はこの牡丹模様を結構描いたのかも知れない。
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