第806夜:久治と水城
先日、玩友のKさんより1本のこけしを見せて貰った。ヤフオクで安価で入手したものだと言う。横山水城作のこけしで強さと気品を湛えた表情に見入った。Kさんは水城(水樹)こけしのコレクターでもあり、水城のこけしは丹念に集めているが、その中でも出色の出来ではないかとのこと。筆者も水城のこけしには関心を持っており、そのこけしを本ブログで紹介させて頂くことにした。口絵写真は、その水城こけしの表情である。
こちらがその水城こけしである。大きさは8寸5分、胴底に「61.11.2」の鉛筆での書き込みがある。水城は久城について2年間の修業の後、昭和59年11月に飯豊にて独立・開業しているので、開業後2年ほど経ってからの作品である。このこけしを見て、どこかで同じようなものを見た記憶が蘇った。三か月ほど前、ヤフオクで同じ出品者から出ていた久治のこけしである。戦後の久治にしては相当の高値となり珍しく5桁を超えていた。気になっていたが、取り逃がしてしまった。そのこけしには「久治戦後のピーク期」との張り紙があり、「木の花(14号)」の『ピーク期のこけし(1)』で中屋惣瞬氏が取り上げていたもの(昭和29年作)と同手と思われる。
その久治のヤフオクでの出品写真(左)をお借りして、比べてみた。頭は久治の方がやや平頭度が強いが、その他の木地形態と胴の線模様はほぼ同じであり、水城のこけしがピーク期の久治こけしを写したものであることが窺われる。表情については、久治は眉・目・鼻・口を顔上面中央に集めて、鋭く緊張感を持ったものとなっている。一方の水城も顔の各パーツを上面に集め、集中度の高い表情であるが、筆致が太く明るく現代的な秀作となっていて、久治との時代さを感じさせる。
水城は久治の各時代の作品を丹念に復元しており、いずれも優れた作品であるが、人気という点では今一つなのではなかろうか。久治ー久志ー久城ー水城と繋がる新山家のこけしは弥治郎系の本流のひとつでもあるが、形態的・描彩的な変化(広がり)が少ないことが、多様性を重視する昨今のこけし界での人気に影響しているようで残念である。
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