年が明けて間もない今日5日、こけし界には辛いニュースが入ってきた。鳴子の長老大沼秀雄さんが、今日の午前1時58分に亡くなられてしまった。行年94歳ということでした。秀雄さんは言わずと知れた鳴子系の本流、大沼岩太郎の直系で戦後の第二次こけしブームを牽引して活躍した中心工人。80歳台の中頃からはこけしの製作を中止していましたが、昔話を聞ける貴重な工人でした。筆者は鳴子を訪れる度に、秀雄さん、正吾さんのお宅を訪ねるのが恒例となっており、何よりの楽しみでもありました。遊佐福寿さんを入れた正吾・秀雄・福寿の三人組は同級生ということもあって仲が良く、それぞれに特徴のあるこけしを作っていました。この三人とのお付き合いは私のこけし蒐集の中核であり、大いなる楽しみでした。その最後の一人であった秀雄さんも遂に逝かれてしまった。ただただ寂しいことである。秀雄さんのご冥福をお祈りいたします。
2023年が明けた。大晦日の昨日は曇り空で初日の出が心配されたが、今日は年明けに相応しい晴天。日が差す前に西方に聳える富士山が紅色に染まり始め、そして待望の初日の出、マンションの彼方から今年最初の光が輝いた。まだ続くコロナ禍にウクライナ戦争、諸物価の高騰など悲観的な昨年を覆す明るい一年になって貰いたいものである。さて、今年最初に紹介するこけし、昨年最後にヤフオクで入手したこけしである。
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先日のヤフオクに福寿さんの墨絵こけしが出ていた。描彩を墨だけ(口など一部紅を使うこともある)で描いたこけしがあることは知られており、福寿さんの墨絵こけしも以前は手元にあった。昔から人形や玩具の類として作られてきたこけしは、赤を中心とした明るい色彩で飾られているのが当たり前である。その用途から墨絵こけしが色彩こけしより売れるとは考えられず、工人も愛好家からの依頼など特別の理由があって作ったものだろう。墨絵こけしは弔事に使われるというようなことを聞いた覚えもある。筆者も普通は墨絵こけしを入手しないが、他ならぬ福寿さんの作であり、昭和30年代の作で見所も多々あるために入手した。口絵写真は、その表情である。
今日から6月である。ゴールデンウィーク後に危惧されたコロナ感染者の増加も一段落して減少に転じ、東京の感染者数も来週には3ケタ台になりそうな状況である。長かったコロナ禍のトンネルもようやく出口が見つかったようで明るい気持ちになっている。先日、レスリングのアントニオ猪木氏がある病気に罹って闘病生活をおくっていると聞いた。そんな矢先、野球の楽天で初代の監督を務めた田尾氏も同じ病気に罹患しているとニュースが報じた。「アミロイドーシス」という名のこの病気は多くの方々にはあまり知られていないが、アミロイドという異常淡白が体内で作られて種々の臓器に蓄積され、臓器の機能不全を引き起こすものであり、治療法が確立されていないため難病指定となっているものである。実は筆者も2008年の4月にその病気の宣告をされ地獄に突き落とされた思いをしたものである。そのことを記した第168夜では千夜一夜達成を断念せざるを得なくなった無念の想いを記している。幸いなことに筆者の場合、アミロイドの検出はその時1回だけで以降は検出されず、千夜一夜も達成し、寿命を保って今に至っていることを感謝しなければならない。当時は殆ど治療法が無かった難病であるが今では幾つかの治療法も出てきたそうなので、田尾氏、アントニオ猪木氏の回復を願っている。
さて、今夜は先日ヤフオクで入手した小松五平のチューリップ模様のこけしを紹介しよう。大正期から戦後40年代までのこけしが残っている小松五平であるが、晩年になってからは素朴で玩具っぽいこけしを作っている。こけしの胴模様には菊を代表に種々の草花が描かれるが、洋花のチューリップは珍しい。五平がチューリップを描いた訳を筆者は知らないので、お存じの方があればお教え願いたい。口絵写真はそのチューリップこけしの表情である。
2022年、「国恵志堂ブックス」の最初の配本(通算5冊目)は、別冊『福寿物語1』となった。遊佐福寿さんのこけしを纏めた本を発行することは、「国恵志堂ブックス」の最重要項目であり、その構想を練っていた。昨年末、節子さん(福寿さんの奥さん)が入院されたとの話を聞き、急遽、制作作業に着手し何とか纏めて、1/25(福寿さんの命日)に発行日を定めた。それから印刷作業などに入り、本が出来上がったのは2月の半ばになってしまった。早速、寿彦さん(福寿さんの息子)に送ったが、節子さんは2/3に亡くなってしまい、残念ながらこの本を見て頂くことは適わなかった。「国恵志堂ブックス」は1冊がA5版144頁となっており、「福寿物語」は1冊では収まらず数冊になる予定。その第1冊目の「福寿物語1」では、福寿さんのこけしの内、初期型、新型、普通型の3つの型を取り上げている。今後、勘治型など他の型を順次取り上げていく予定である。口絵写真は、その表紙の部分拡大である。
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